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兄さんが背負い過ぎなRPGことTOG-fで背景が無いブログ 全員愛すけど兄弟贔屓で弟→兄 他の傾向はココで(一読推奨)
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戦うぼく達

 剣を弾かれた右手は激しく痺れ、即座に感覚が失せた。最速で左剣を銃形態に移行させ、銃撃で牽制しつつ一旦距離を取ろうと思った時、モンスターは頭上に現れた氷の棘に次々と貫かれて絶命した。
 マリクさんかと察した直後、突如体の中で響いた音の正体が骨が軋んだ音だと気付く、世界が横へと流れた。地面の上をぼくの体が滑っていく音は何度聞いても酷く耳障りだ――真横になってしまったボヤけた世界を睨む。
 幸いにも目の前に転がっていたメガネを右手で掛け直し、痛む左肘を立てて起き上がろうとしたが、右脇腹に激しい痛みが走る。立てない……!これは、マズいですね。
 ぼくを突き飛ばしたと思われるモンスターが時は今とばかりに突進して来る。脱落を覚悟したぼくの目の前に現れたのは朧気な光子、不覚にも胸が躍ってしまった。光子は一瞬にして広がる光となり一気に集束して四つの人の形を成した、四方からの同時斬撃にモンスターは咆哮を上げながら沈む。
 左からも来ている、兄さんは横に気を配っている気配がない、気付いていないかも知れない!伝えないと――背中に声を掛けたが掠れた小さい声しか出ない、歯痒い!
 骨が砕ける音……杞憂でした。モンスターの顎に強烈なアッパーを決めた鞘から滑り抜ける剣の柄を右手で握ったかと思えば、いつの間にか剣は振り抜かれていた。モンスターの喉が横一文字に斬り裂かれている――太刀筋が相変わらず速過ぎだ。手合わせの時とは全く違う、兄さんは本当に甘い。
 最期の足掻きとばかりにモンスターがこっち側に倒れて来たが、兄さんが回し蹴りを叩き込む。モンスターは口からではなく喉から血を噴きながら、ぼくとは逆方向に倒れていった。
 剣を納め、振り返りながら兄さんが言う。「後ろでシェリアが今詠唱してくれてるから、もうちょっとジッとしてろよ。お前が動ける様になるまで俺が側にいるから」
 格好良いなんて全然思ってません。兄さんはまた背中を向けて地面に刺さっていた何かを抜いた、ぼくの右剣だ!今まで気付かなかった、ここに移動する前に拾って持って来てくれたのか。
「左のはちゃんと持ってるよな、うん。じゃあこれ、」
 屈んで僕の手元に右剣を置こうとした兄さんの顔付きが一瞬で変わる、兄さんは右剣を置かずに手元で回転させて逆手に持ち、電光石火で立ち上がりながら右側に斬撃を放つ。視界外から弱々しい鳴き声と共にドシャッと何かが倒れた音がした、モンスターが忍び寄って来ていたらしい。
「ゴメンな、つい使った。怒らないでくれよ?」右剣をぼくの手元に置きながら兄さんが苦笑を浮かべる、別に怒りませんよ。「あとさっきは有難うな、左から来てるって教えてくれて。助かったよ」
 ――信じられない、あんな声が聞こえてたなんて。兄弟だから?……ぼくらしからぬにも程がある思い付きだ、我ながら気持ち悪い。いや、もしかするとぼくらしいのか?ああもう、どうでもいいです!
 地面が淑やかに光った、走る光の軌跡が一瞬で陣を描く。体内の光子がシェリアの光子に呼応する様に奮え立つ中で、陣から湧き立った光によって体の痛みが消えていく――よし、起き上がれる。
「もう大丈夫!」後ろからシェリアの声が聞こえた、有難う。
「よし、あと一匹だ。行けるよな、ヒューバート?」
 置かれた右剣を手にしつつ立ち上がりながら答える。「当然でしょう、あんなのぼくだけで――」違う。続きを飲み込んで本心を引っ張り出す。「一緒に行きますか」
「ああ、行くか」
 モンスターは一歩も動かずに体中の棘の様な毛を逆立てて威嚇しているが、完全に目が怯えている。尻尾を巻いて吠える野犬にしか見えない。逃げるなら、今の内。兄さんが見逃すなら、ぼくも見逃すので。
 ゆっくり近付いて来るぼく達に耐え切れなくなったのか、モンスターが狂った様に咆哮を上げながら突進して来る。
「無駄なのにな」兄さんが溜め息交じりに低く呟いた。
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